(左:ギャビン監督、右:エルメス脚本家)
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の長編コンペティション部門ノミネート『ある母の復讐』が、映画祭最後の上映作品となりました。
映画『ある母の復讐』(興愛別離)は、台湾の「第46回ゴールデンベールアワード」では、最優秀フィルム、最優秀主演女優賞、最優秀脚本賞を入賞。マカオ映画祭最優秀主演女優賞、中国金鶏百花映画祭では特別上映。台湾映画祭、高雄映画祭でも上映されている作品です。
<STORY>
おもちゃ工場で働くユイホアと工場主の令嬢シュンファンは、誕生日が同じで大の仲良し。ユイホアは工場のグォウェイ係長と結婚するが、シュンファンもグォウェイを強く愛していた。ユイホアにバレぬよう工場で密会し、愛し合う二人。ユイホアの妊娠が明らかになった頃、シュンファンもグォウェイの子を宿し、ユイホアは二人の関係を知ってしまう。工場を首になったユイホアは離婚するが、思いもよらぬある条件を持ち出す。恋愛と不倫に濃いスパイスを3種類ほど加えたような味わいの物語。
今回は、ギャビン・リン監督とエルメス・リュ脚本家に単独インタビューをさせていただきました。
Q:一人の男性が二人の女性に愛される作品を作った経緯は?
A:一番ドラマ的な三角関係の構造によって、高い緊張感などをうみ出すことができるだろうと思い、高いバセットがある映画ではないので、三角関係が一番適していると思いました。70年代にアイドルの三角関係のドラマが非常に人気だったのです。いわゆる70年代に流行っていたものの時代を超えたリメイクになるかもしれません。
Q:70年代を演出するために、ファションや小道具などは苦労しましたか?
A:お母さんが知り合いなどにお願いし調達しました。もう昔の洋服なのどは捨ててしまっているかと思いましたが、思い出のデートに着た洋服や結婚式などに使用したものは大切に保管していたそうで、衣装として使用するためにお借りしました。一番雰囲気を作るために苦労したのは壁紙で、当時は壁紙に薔薇の花模様があったので、当時の雰囲気を作るために薔薇の部分を新たに作りました。そして、予算がなかったので、その壁紙を剥がしてクッションを作りました。結婚して部屋を片付けているシーンの壁には、ハワイの写真やポスターなどを貼ったりして雰囲気を作りました。70年代はハワイの写真やポスターなどが流行っていたようです。
Q:この撮影で大変だったことはありましたか?
A:まず、予算が1000万円だったのと撮影日数が15日間という限られた条件での撮影が一番大変でした。もっともチャレンジしたシーンは、子供を交換することを決断するシーンです。二人の女優さんが精神的にその状態を作り出すシーンと、ホテルで3人が出会うシーンで女優さんが真実を知って崩れ落ちるところなどの精神的な点が苦労しました。
Q:女優さんの真に迫った演技、迫力がある演技でしたが、配役を選んだ理由は?
A:シュンファン役のハンイン・チョウさんは、もともと舞台女優で映画では昨年上映の『ズーム・ハンティング』が初めてでした。その作品では嫌われ役で、『ある母の復讐』での工場の令嬢役シュンファンは、奥さんがいる男性との不倫役ですので、また人から嫌われる役は気が進まず可哀想な役をしたいとユイホア役。ユイホア役のペギー・ツァイさんは、CMでも非常に人気がある皆から好かれる女優さんです。彼女は逆に自分には違った面を演じたいと工場の令嬢役をやってみたいといことで、上映の役柄とは逆のシュンファン役でした。しかし、自分はユイホア役はペギー、シュンファン役はハンインが適していると思い、最終的にはトレードして今の配役になりました。
Q:昨年は『ドック・ウォンテット』で犬の虐待という事実の話でしたが、今回の『ある母の復讐』での三角関係という内容は、監督の実体験をアイデアにされているのですか?
A:『ある母の復讐』は、オリジナル作品です。はじめは子供を交換するではなく、子供を奪い取るという内容でしたが、そうなると子供を取られた側が警察を呼べば済むことなので若干内容を変えました。三角関係?僕は真のピュアですよ。三角関係は実体験ではないですよ。(笑い)
Q:次回作の予定は?
A:『ドッグ・ウォンテット』は、別の視点で書き直しをしています。脚本はエルメスが脚本担当をしています。もう一つは、シンプルな家族の物語で、60代のお母さんと二人の娘。娘は32歳でキャリアウーマンで成功者、もう一人の娘は精神的障害を持っているという内容です。多分こちらの方が先に映画が完成すると思います。
Q:日本での上映が楽しみですね?
A:日本で上映できることを心から祈りたいですね。
Q:日本の皆さんへメッセージはありますか?
A:日本、中国、台湾と違う言語を持っていますが、愛すること重んじるということは共通だと思って映画を作っています。
Q:今回来日して、どんな場所が良かったですか?
A:富士山です。来日中に富士山の五合目まで行き、富士山の美しさを見ました。頂上は雪が積もっているのが見れ、ちょと寒かったですが綺麗でした。そして秋葉原にも行きました。AKB48やメイドカフェではなく、カメラや撮影で使う物などを探しましたよ。
アットホームな雰囲気の中、単独インタビューの問いに答えていただきました。写真を撮影するときも洋服がオシャレで可愛らしいお二人なので、台湾の何処で購入したのかを尋ねると日本で新宿で購入したとのことでした。そして、華流についての話題も。ギャビン監督もエルメス脚本家もまだお若いですが、映画という作品を作る姿勢には、こだわりが垣間見る部分も。ギャビン監督とエルメス脚本家のゴールデンコンビの次回作も期待したいと思いました。
上映後のQ&Aでは、映画のワンシーンで切手コレクションをしているという設定なのですが、映画で出てくる切手は、監督が子供の頃にコレクションしていた切手を撮影で使用したそうです。切手コレクションも自分は興味がなかったのですが、監督のお父様がいずれ値が高騰すると言われ仕方なくコレクションしていたと会場に笑いを沸かせました。そして、多くの観客はすすり泣き、是非とも日本でも上映して欲しいという声が、非常に多かったのです。中には日本の昼メロにも向いているのではないかと某TV局の紹介の声もありました。