過激な成長を続ける中国で、またも注目すべきインディペンデント映画がたくさん登場。第三回目となる今回は、ドキュメンタリーやアニメを含め、今の中国だからこそ撮れる、インディペンデントにしか描けない10本の長編作品を上映されます。
映画祭最初の上映作品は、『花嫁』章明監督の作品です。10月に開催された「中国映画週間」でも来日されていた章明監督ですが、『花嫁』上映後のQ&Aでは作品について熱く語っていただきました。
『花嫁』(新娘/THE BRIDE)2009年/102分
ストーリー
長江のほとりの町で暮らす、何をするにも一緒な中年おやじ四人組。彼らはいずれも円満とは言い難い家庭生活をおくっている。そのうちの一人、妻に死なれたチーさんのために、彼らは嫁探しを始める。ただ、彼らには人に言えないたくらみがあった。哀愁ただよう間抜けな男たちをシュールでユーモラスに描いた、ベテラン監督ならではの味のある一本。
監督:章明(チャン・ミン)『沈む街』『週末の出来事』『結果』など
<Q&A>
Q:主役の女性が印象的な演技だったのですが、彼女はどういった役者さんですか?
監督:彼女はレストランで働いているバイトのウェイトレスをしている方で、私がレストランで見つけたのです。でも、映画とは関係がない方です。最初は映画で演技をすることを嫌がっていたので「レストラントで働くのと同じく、これもひとつの仕事なんだよ。」と説得しました。終わってから考えると彼女の演技が一番自然だったと思います。ここに出ている演技をしている人は素人なのです。私が撮ってきた作品についても8割くらいは素人の人を使っています。制作資金にかかわらず、2,30万円でも100万円で撮った映画でも、みんなそのようなやり方です。俳優を起用するお金がないからではなく、私はこういうやり方に慣れているのです。
Q:『沈む街』を拝見して素敵な監督だなと思っていました。今回の街を選んだのは理由は?舞台になっている街と山の村の距離はどれくらいあるのですか?
監督:映画の中では山に登って下を見下ろしている山を越えたら街があるという設定でしたが、実際の撮影は遠いところでしています。巫山というところは私が育ったところで、私の兄弟は今でも暮らしています。中国の町は都市部である面もあれば、農村の繁栄している面もあり面白いです。今の中国の変化というのはそこに現れています。『沈む街』になっていた舞台になった巫山という街は、今はダムが建設されて沈んでしまったので、新しい街ができました。今回の『花嫁』に出てくる巫山という街は、新しい街になります。どの街も新しく建物が出来て面白みがなくなってきています。多分、今新しく建っている建物も2,30年過ぎれば壊されてるでしょう。中国人の考え方と同じで、目の前の利益だけを考えて後のことを考えていない。この映画もある意味では、将来に対しての絶望的なものを表している作品です。
(左から 「中国インディペンデント映画祭」中山さん、章明監督、「日吉電影節」吉川さん)
Q:実際にやっているミスコンなど実景が多いので、ドキュメンタリー的な雰囲気もあり面白かったのです。ドキュメンタリーやフィクション映画についての考えは?
監督:この映画の中には、実際に内容を取り入れています。ミスコンや警察の大会などのシーンもその場にキャストを連れていき撮りました。こういったシーンは今の町を非常に如実に表しています。ドキュメンタリーとフィクションの違いについてですが、俳優の違いだけだと思います。
ドキュメンタリーに出てくる登場人物も俳優と言えます。フィクションになると俳優が別の俳優になるわけです。私はこの作品の前作品『巫山の春』(ドキュメンタリー作品)を撮っていますが、そこに出ているのは同じ人達なのです。『巫山の春』の方が面白いとは思います。その作品は北京で一度上映したのですが、そのあとは上映していません。ドキュメンタリーなので登場する人のプライバシーに関するものだからです。私の両親も出ています。フィクションであれば作られた物語りだからと言えるのですが、ドキュメンタリーになると真実になってしまうのです。
Q:『消えゆく恋の歌』の舞台地は?
監督:全てが巫山で撮ることはできないわけです。同じ場所で撮ろうと思えばできます。ただ、出資者の意見もありますので、あの作品に関してはそこの地域が出資したので、その地域で撮るということになるのです。先月東京で上映した『消えゆく恋の歌』は、この作品とは違った作風となります。
Q:『沈む街』に出ていた役者が今回も警官役で出ていましたが、彼は素人なのか俳優なのか。そして、『沈む街』で警官をしていた方が、『週末の出来事』でも警官役で出ていたのですが、警官にこだわっているのですか?
監督:今回の作品で警官の役をしていた人は、以前の作品ではチンピラ役でした。同じ人が演じています。私が言いたいのは昔チンピラだった人が今は警官になっていると言いたいです。役者は素人を使っています。私の他の作品とこの作品の違いは、その人それぞれの自分の生活と共通点が多いということです。このストーリーも最後に彼女が死んでしまわなければ、もしかしたらこの話はもっと面白くなったのかもしれません。今回はこの作品で彼女が死んでしまうので、ドラマチックな展開になっているのです。
Q:今回の作品で苦労したことは?
監督:この作品は2007年から撮り始め、2008年と2009年にも撮っていますので、非常に長い時間をかけて作られた作品です。スタッフも10人に満たない人数でした。編集に関しても素材がたくさんあり、ノートパソコンを使ってそれを編集し、さらに特殊な加工をしたりしています。一番苦労したところは、チーさんがバイクで足を怪我する話なのですが、実際にバイクで腕を怪我してしまったのです。腕を怪我した話にしてしまえば良かったのですが、それ以前に足を怪我したシーンを撮ってしまっていたので、腕を怪我している期間は撮影が止まってしまったのです。それが一番苦労したことです。
私はこの後、中国に戻りましてまた巫山で今月末から撮影をします。また作品を日本で上映できるといいなと思っています。
『中国インディペンデント映画祭2011』
開催日:12月3日~16日
会場:ポレポレ東中野
当日券 3回券3,600円/1回券 一般1,500円 大・専1,300円 中・高・シニア1,000円
主催:中国インディペンデント映画祭実行委員会
【関連イベント1】
『日吉電影節2011』
☆日時:12月7日(水)
16:30~作品上映『新説監督短篇集』
18:15~講演会 ゲスト:章明氏・中山大樹氏・他
☆場所:慶應義塾大学日吉キャンパス(第4校舎B棟J19教室)
☆対象:学生が対象ですが、一般の方も参加可能
☆入場料:参加予約不要(但し、満席の場合は入場を断らせていただく場合があります)
☆主催:慶應義塾大学教養研究センター日吉行事企画委員会(HAPP)
協力:日吉電影節実行委員会
http://ameblo.jp/hiyoshi-keio/
☆連絡先:dianying@ml.keio.jp (吉川)
【関連イベント2】
武蔵野美術大学造形研究センター イメージライブラリー映像講座
『徐童監督 「収穫」上映と講演』
☆日時:12月9日(金)時間未定
上映作品:『収穫』(2008年/98分)
講演ゲスト:徐童(シュー・トン)氏・中山大樹氏
☆場所:武蔵野美術大学 鷹の台キャンパス
☆対象:一般の方の参加可能
入場無料・参加予約不要
☆主催:造形研究センター
☆運営:武蔵野武術大学 美術館・図書館 イメージライブラリー
☆連絡先:042-342-6072
http://img-lib.musabi.ac.jp/event/event.html
【関連イベント3】
場外シネマシリーズ3
轟轟烈烈!!中国インディーズ・ムービー<冬>
パート2 2011.12.10(土)15時(予定)栗憲庭電影基金の所蔵作品
space&cafe ポレポレ坐(ポレポレ東中野1F)
パート3 2011.12.17(土)15時(予定)初期のインディペンデント作品
光塾COMMON CONTACT 並木町(渋谷)
現在に至る1990-2000年代の作家たちの挑戦の軌跡を探る!9月に引き続き開催。
作品・ゲストは目下選考中!詳細はブログで更新します
主催:場外シネマ研究所(中村・佐藤)joudaicinema@gmail.com