クエンティン・タランティーノ監督初の西部劇にしてラブ・ストーリー=『ジャンゴ 繋がれざる者』。今週日本時間の25日(月)に発表されたアカデミー賞で、脚本賞(クエンティン・タランティーノ)、助演男優賞(クリストフ・ヴァルツ)の2部門に輝いた。アメリカでは昨年12月25日に公開、タランティーノの前作『イングロリアス・バスターズ』の記録を超えるタランティーノ史上最大のヒットとなり、日本では3月1日に公開され、大ヒットを予感させる好スタート。
アメリカの黒歴史を初めて描いたタランティーノ流西部劇!
タランティーノ史上最高のヒット!
全米公開13日で1億ドル突破!!
・日本のファンへ一言ご挨拶を
レオ:日本に戻れて嬉しいです。日本が大好きです!
・あなたが演じたカルビン・キャンディは、あなたにとって初の本格的悪役であることはもちろん、ハリウッド映画史上でも類を見ない芯からの悪人です。このような役、しかも主役ではない役を自分からやりたいと言ったと聞きましたが、どう興味もって、出演を決心されたのか、その経緯を教えてください。
レオ:僕は常に革新的な仕事をしている監督と仕事をしたいと思っている。だからタランティーノとはずっと仕事がしたいと思っていたんだ。たとえどんな役柄でも。タランティーノとは過去に何度か話す機会があったけれど、この作品は南北戦争直前の、アメリカ人が触れたくない時代を描いている。脇役といっても南部の腐敗の象徴のようなキャラクターで、社会的な影響も含めて、色んな側面を描いているんだ。そしてタランティーノはまるで脚本から飛び出してくるようなキャラクターを書いている。ハリウッドでこの脚本が回ったとき、とにかくみんなショックを受けた。こんなの読んだことない!ってね。ぜひともその一部になりたいと思ったし、これはアメリカが過去に振り返って鏡を覗くような大事なプロジェクトだと思ったんだ。
・タランティーノ監督のアカデミー脚本賞おめでとうございます。本当に強烈なキャラクターとディカプリオさん始め彼らが放つセリフに圧倒されました。あなたが初めて脚本を読んだときのことと、タランティーノ監督との初仕事がどんなものだったかお聞かせください。
レオ:タランティーノは監督であると同時に脚本家でもある。カルビン・キャンディというキャラクターに対してどういう方向付けにするのか色々とやりたいことが生まれてきて、彼には早いタイミングでアイディア出しをしたんだけれど、それに対して信じられない程素晴らしいモノローグをたった数日間で書き上げてくれたんだ。スティーブンという黒人に育てられているにも関わらず、彼らを人間として扱わない。カルビンは当時の環境や時代の産物とも言える嫌な奴だけれど、何か正当化する理由がないといけないと思って、そこで「骨相学」提案したよ。無知なのにえせ科学者のように物を言う、2ページに及ぶモノローグだったけれど、あれはタランティーノが天才である証だね。
・骨相学のシーンで実際に怪我をしたと聞きました。撮影中大変だったエピソードは?
レオ:自慢をしているように思われたくないのだけれど・・・質問をされたので言います。先ほど話した2ページほどのモノローグという長いシーンは2~3日かかったのだけれど、他のキャラクター達を威嚇するためにテーブルをバンバンたたいていたんだ。するとあるときシェリーグラスの上に手が当たって柄の部分が手に刺さってしまったです。そのとき思ったのは、まず第一に「痛い」、そして次に「このシーンを使ってもらえたら最高だなぁ」。そのまま演技は続けたから、柄の部分が手に入ったままで、テーブルも血に染まっていって、ジェイミー(・フォックス)の顔は「ええー」となっているし、タランティーノもレンズから目を離して大丈夫かなとちらちらと見ていたよ。後で数針縫わなければいけなかったけれど、実際に使われたんだ。ある意味俳優としてはハッピーだったね。血だらけの手でブルームヒルダの顔を触るという画が撮れたし、後には包帯を巻くということもリアルに出来たしね。
・ナイスガイなディカプリオさんですが、この悪役を演じる上でどのように役と向き合った?
レオ:この役は非常に酷い、憎むべき人物だ。今まで演じたどのキャラクターより忌むべき人物だね。だからこそやりたいというのが半分。それからここまで大胆不敵な人物だと人の気持ちを考えなくても良いし、自己陶酔してその時の勘で自由に演じられるから、ある意味開放感を感じるんだ。そういう意味では楽しかったよ。よく俳優は一番楽しい役柄は悪人と言うけれど、そういう理由ですよね。
・今回の来日でやりたいことは?
レオ:京都には5回行っているんだけれど、日本に来るのは本当に楽しみ。以前両親を連れて行ったんだけど、とにかく大好きな街で、両親は僕のことを寺院マニアと呼んでいるよ。ガイドがヘトヘトになるくらい、一日に5箇所くらい寺院に行くんだ。日本の文化が大好きで、もう中毒のようなものだね。京都のような古い街に行くと映画の中に入ってタイムスリップしたような気持ちになるんだ。現実世界とは完全に離れて、そういう気持ちになれるのはすごく楽しいね。
・『リンカーン』への出演を迷っていたダニエル・デイ=ルイスの背中を押したのはあなただと伺いました。俳優同士にはそういった関係があるものかと思うのですが、あなたにも仕事を選ぶ上で頼りにしている友達はいらっしゃいますか?
レオ:俳優同士でのそういった会話は確かにありますね。ダニエルには・・・これを話すとマーティン・ルーサーキングかと言われると思うけれど、、、ある夢を見たんです。「あそこにリンカーンがいると思って近づくと・・・ダニエルだった。見るととても役に入りきっているから声をかけないほうがいいな、と思いそもまま僕は去った」という内容の。その夢を見たことを彼に話してそれがきっかけになっているようなんだけど、だから誰かが演じるのならば彼しかいないと思うし、そのために生まれてきたといっても良い人だと思う。僕は芸能界で育ってきたので相談できる友達はたくさんいます。トビー・マグウワイアもその一人。それに夢とかちょっとした昼寝をきっかけに行動することも多いんです。『ウォール街の狼』もスコセッシと映画を撮っている夢をみて、それを彼に話したところ本当に演じることになりました。
・好きな悪役は?
レオ:いっぱいいますね。うーーん。。選ぶのは難しいな。参考にしたのは『トゥルー・ロマンス』のゲイリー・オールドマン、『トゥームストーン』のバル・キルマーのふたり。今まで観てきたいろんな悪役を凝縮したのがキャンディかもしれない。好きな悪役は・・・あまりにも多すぎて難しいけれど、一人挙げるとするならば『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンスかな。でも彼はある意味ヒーローだね。
・休業されることが話題になっていますが、今後はどのように活動されるのでしょう?
レオ:ちょっとしたことを言っただけなのに、印刷されると時に違う意味にとられてしまうことがあります。あのとき僕が言ったのは、2年間で3本出演したのでちょっと休憩するというつもりだったんだ。大好きな俳優業をやめるつもりは全くないよ。休んでいる間は、情熱を注いでいる環境問題や慈善事業をやっていきたいと思っています。象牙のための象の乱獲を止められるよう、政府に象牙の売買をやめさせるよう訴えたり、自分が貢献できることならやりたいと思っているよ。トラブルにならないで、良い意味で時間を使える自分にとっても良い時間の過ごし方なんだ。みなさんもぜひ興味をもってくれたら嬉しいです。
『ジャンゴ 繋がれざる者』レオナルド・ディカプリオ舞台挨拶
『ジャンゴ 繋がれざる者』は昨日 日本で初日を迎え、全国で大ヒットとなり今日は二日目なんですが、満員御礼のお客様にご来場頂きました。噂によるとこのチケットは販売してからあっと言う間の4時間に売り切れたそうです!まずはご挨拶を。
レオ:今日は来てくれてありがとう。日本が本当に大好きで、いつも戻ってくるのをとっても楽しみにしています。(スチールカメラのフラッシュが止まると。)みんなの顔がやっと見えたよ。(手を振り、会場も大盛り上がり!)
・ディカプリオさんの初の悪役ということで話題沸騰ですが、これから映画をご覧頂く皆様に、簡単にあなたの役どころを教えていただけますか?
レオ:今回の作品は監督の前作『イングロリアス・バスターズ』でもそうでしたが、アメリカの過去に遡って歴史を切り取り、独自の解釈を加えタランティーノ・スタイルを与えています。僕は『イングロリアス・バスターズ』の大ファンなんです。彼は作家としてとても優れていて、素晴らしいキャラクターを書くんです。この大胆な脚本が駆け巡ったとき、ハリウッドは震撼しました。アメリカの歴史上、暗黒の醜い時代を描く、こんな大胆なことができるのはタランティーノしかいないと思います。ハリウッドのスタジオシステムではなかなか生まれない、ユニークで素晴らしい監督だからこそできた作品。ながらこそぜひとも出たいと思ったんです。今回の作品では黒人のヒーローを主人公に据えて、私の演じる役は醜い悪役。南北戦争直前の道徳的腐敗を凝縮したようなキャンディは、当時の農園主を象徴していて、芯から腐っているんです。今まで見た中で最悪の役柄だと思いますよ。
・このカルビン・キャンディーという悪役をやるにあたり、誰か参考にした人などいますか? また、役作りにおいて苦労した点などありますか?
レオ:ふたりの人物を参考にさせてもらいました。一人は『トゥルー・ロマンス』のゲイリー・オールドマン。ドレッドヘアの白人麻薬密売人です。2人目は『トゥームストーン』のバル・キルマー、ドク・ホリデイですね。キャラクターもですし、南部がかったしゃべり方も参考にさせてもらいました。
・今まで数々の名監督と一緒にお仕事をされてきてますよね。ジェームズ・キャメロン監督、マーティン・スコセッシ監督、クリント・イーストウッド監督、スティーブン・スピルバーグ監督。お名前をあげればきりがないのですが今回は タランティーノ監督との初仕事、いかがでしたか?
レオ:ユニークで素晴らしい監督です。タランティーノは監督であると同時に脚本家でもあるので、いろいろとディスカッションすることができました。僕がアイディアを言うと、彼が書き出してくれるんです。そのひとつにカルビンがやっていることを正当化させるために“骨相学”を提案したんだけれど、1週間後には2ページにも渡る長いモノローグが出来上がっていました。非常に素晴らしいシーンで、こういう人と仕事できるのは本当に嬉しい。偉大な監督です。映画は最終的には監督のもので、みなさんを引き込むのは監督という、船で言うとキャプテン。最高のキャプテンたちと仕事をしたいといつも思っています。
・最後に
レオ:みなさん今日は楽しんでください。きっと喜んでいただけると思います。
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