『シネマパラダイス★ピョンヤン』北朝鮮が見えるトークショー

 

奇妙で不可解な国は知られざる映画王国だった!北朝鮮の映画界に初めて密着したドキュメンタリー『シネマパラダイス★ピョンヤン』(監督:ジェイムス・ロン、リン・リー/配給:33 BLOCKS)が、38日(土)より、渋谷 シアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開。

 

25日(土)、公開に先駆けて早稲田大学・大隈記念講堂小講堂にて試写会を実施!そして試写後には、北朝鮮をはじめとするアジアを長きにわたって取材してきたジャーナリストの野中章弘氏(アジアプレス・インターナショナル代表)、さらに、日本での在日同胞向け情報紙「朝鮮新報」を発行する朝鮮新報社・鄭 茂憲 記者をゲストスピーカーに招き、“将軍様のハリウッドから覗いた北朝鮮!”をテーマに、現在の北朝鮮の知られざる実情に迫るトークショーを実施した。

©Lianain Films

 

まず、野中氏は「僕自身、一度も北朝鮮に行ったことがなく、マスメディアが流す情報は限られていて、そこで一般の人々の姿を目にすることはあまりない。しかも隣の国でありながら北朝鮮の一般の人と出会う機会がない中で、この映画を観ると、北朝鮮で生きる人々の素顔が垣間見れ、彼らも我々と同じようなことで、喜んだり、涙をながしたりするんだということがわかる。カメラを通して、呼吸や鼓動を感じることができて非常に興味深かった」とコメント。

 

一方、北朝鮮に支局を持つ、朝鮮新報社の記者として、2012年以降、2年のうち半分はピョンヤンに滞在しているという鄭氏も、「まず、映画監督の父と女優の母というエリート一家で育った模範的な青年と、自由な女子大生の対比が面白く、特に、女子大生の家にクルーが入り、一般家庭の朝ゴハンのシーンを撮影できたのはかなり異例。食卓のおかずやお化粧のシーンなど、海外のメディアがよく撮影できたと思う。そういう意味で非常に素の部分がよくでていた」と感心した面持ちで感想を語った。

 

さらに、鄭氏によると、北朝鮮における映画とは、日本のように商業的なものではなく、あくまで社会啓蒙の手段として製作されているとのことで、中には恋愛映画のような娯楽作もあるという。しかも「名作になってくると長編が何部作も続けて製作されるのが常で、本作の中にも出てくるキム・ジョンイルが作った撮影所は、日本でいうと京都にある映画村(太秦)のようなところ。そこには日本など各国のセットがあり、『名もなき英雄たち』という10部作もあるスパイ映画では、その主人公が各国で活動するシーンをそのセットで撮影した」といった、北朝鮮の映画界にまつわる興味深い話も続いた。

 

また、そのあとの質疑応答では、予定時間を大幅に超えるほど観客から多くの質問が挙がり、日本を含む海外メディアの報道をどう思うか、という質問に対しては「普段TVや新聞などの報道は、朝鮮をすべて政治化し画一化させたものとして報道されていると思う。実際2千万人の人が暮らす、その生活や文化の息吹は日本のメディアからは感じられない」(鄭氏)、「ジャーナリズムはイデオロギーではなく、事実から出発するのが大前提。そして住んでいる人に思いをはせ、歴史的な文脈からみていくことが必要。この映画をみることは良い機会だと思う」(野中氏)という話など、多岐にわたり、この映画に対する観客の関心の高さが感じられるトークショーとなった。

 

監督/ジェイムス・ロン、リン・リー 撮影・編集/ジェイムス・ロン プロデューサー/リン・リー、シャロン・ルーガル

2012/シンガポール/朝鮮語・日英字幕/93/原題:The Great North Korean Picture Show ©Lianain Films

配給・宣伝/ 33BLOCKS(サンサンブロックス)         

公式HP:cinepara-pyongyang.com

3月8日(土)、渋谷 シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

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