2日(金)、「明治座 五月花形歌舞伎公演」が初日をむかえ、開演前に市川染五郎が囲み取材を行いました。本公演の見どころや初日舞台への意気込みなどを語りました。
Q:初日を迎えてのお気持ちを改めて伺いたいと思います。
染五郎:ただ“やりきる”と思っています。いずれのお芝居も思い入れの強い作品なので全てを出し切りたいと思っています。
Q:一番の見所はどこでしょうか
染五郎:一座全員の思いでもありますが、どの演目も、とにかく「出し切る」ということが大事ではないかと思っています。かっこわるい位へろへろになりながらもやりきって、明日も明後日も出し切っていきたいと思います。
Q:若手の出演者がたくさん出演されていますね。
染五郎:そうなんです。大きな役をそれぞれにやるので、公演への思いは全員強いと思います。今日が最初として、千穐楽を迎える頃にはその思いがもっと何倍も大きくなっていると思います。
Q:明治38年以来の上演作品もあるとお聞きましたが
染五郎:昼の部の「艪清の夢」です。亡くなった宗十郎のおじさま(故・九代目澤村宗十郎)がご自身の「宗十郎の会」で上演したものを観ておりまして、とてもおもしろくておおらかなお芝居で、いつかできるといいなと思っていました。しかも明治38年に上演した明治座で、久しぶりの上演という縁のある芝居でもあります。宗十郎のおじさまの古風でおおらかな歌舞伎を復活したいという思いがありますね。
Q:初役があるとうかがいました
染五郎:今回は全てが初役になります。昼の部の「釣女の太郎冠者でたくさん笑って、登場人物全てが愛で溢れているあたたかさとほのぼのさを感じて戴き、「艪清の夢」では宗十郎のおじさまのつくられたおおらかな芝居を復活したい。おじさまに観て戴けなかったのが残念ですが、喜んでもらえるような芝居になるよう、演じたいです。
夜の部の「伊達の十役」は10年以上前から、あこがれていた芝居です。今回勤めさせて頂けるのは夢のような心地ですが、猿翁のおじさま(三代市川猿之助、現・猿翁)の芝居に向ける魂を、情熱を、感じて戴けるように演じたいです。
Q:上演が決まったことに、猿翁さんはなんとおっしゃってましたか?
染五郎:チャンスを戴いたことを喜んでくださり、これに応えたいです。
Q:猿翁さんからアドバイスはいただきましたか?
染五郎:直接ではありませんが、稽古に一門の方がずっとついてくださり、細かく丁寧にご指導いただきました。
Q:夜の部は十役早替わりされるのですよね。
染五郎:はい。十役を一つの芝居の中で演じていますが、ほぼ私が台本161ページ分を一人でしゃべっている芝居です(笑)
Q:十役を演じ分けるなど、体力的にも大変ではありませんか?お稽古から千秋楽まで長丁場ですが、健康管理はどのようにされていますか
染五郎:食事、睡眠の基本的なところから気をつけて疲れをためないようにしています。周囲人々もにささえられて集中させて貰っています。ただお芝居としてはそうしたペース配分は考えずに、一日一日持っているものをすべて出し切るという気持ちです。
Q:十役、わからなくなりませんか?
染五郎:稽古の時は、女役と男役の声を出し間違えたりしました(笑)この作品は完成されていて、エンターテインメント性に富んでいるので、流れにのって観て頂ければ絶対おもしろいと思います。
Q:明治座では、染五郎さん初めての宙乗りと聞きました。
染五郎:そうなんです。明治座は東京で唯一、宙乗りの装置が常設されている劇場で、このお芝居にはとても向いていると思いますし、「伊達の十役復活上演初演の縁の地でもあります。いろいろあると思いますが、この仁木弾正の宙乗りは最高だと思っています。
Q:猿翁さんの使われた衣装を引き継いで使っていると聞きました。
染五郎:全部ではありませんが、いくつかは寸法を直して、そのまま使わせて戴いています。
Q:座頭公演としての思いはいかがですか?
染五郎:「思い」はたくさんあるのですが、その思いを千秋楽まで持ちつつ、みなさまに伝わるようにしたいですね。昼の部の「釣女」、「艪清の夢は宗十郎さんへ向かって、「伊達の十役」は猿翁のおじさまや、脚本の奈河影輔先生や、装置に長年たずさわった方にみていただきたいです。それぞれ他の役者さんも、高いところに向かっているという「生き様」を見せたいです。
Q:GW中なのですが、もし染五郎さんに連休があったら何をされますか?
染五郎:稽古をしたいですね。劇場にどっぷりつかって、深夜の2時、3時まで稽古をしました。これは嬉しいことですよね。幸せを感じています。凄いものにしてお見せしたいです。とても寝不足なのですが(笑)、それも感じないくらい、舞台に立つと力が出てくる。宗十郎のおじさま、猿翁のおじさまから力を戴いているんだなぁと感じています。
【昼の部】
三大名作のひとつ『義経千本桜』より、都落ちする義経一行の難儀を救う佐藤忠信の活躍を見せる華やかな一幕「鳥居前」で幕を開ける。続いて、狂言をもとにユーモア溢れる舞踊劇『釣女』。『邯鄲枕物語』は人生の栄枯盛衰をほのぼのと描いた洒落っ気たっぷりの一幕。
【夜の部】
三代猿之助四十八撰より『伊達の十役』を上演。江戸時代に実際に起きた仙台藩伊達家の御家騒動を題材に、妖術を使って御家乗っ取りを企む仁木弾正の悪事を中心とした物語をスピード感溢れる展開で見せる。登場人物十役を一人で四十回を超える早替りで魅せ、宙乗りをはじめ仕掛けを駆使した舞台から一瞬足りとも目が離せない。
≪公演情報≫
○公演日程:5月2日(金)~26日(月)
○開演時間:昼の部 11:00 / 夜の部 16:00
○料金(税込)
一等席(1階席、2階席正面)12,600円
二等席(2階席左右1・2列)8,400円
三等A席(2階席左右3・4列、3階席正面)5,250円
三等B席(3階席左右)3,150円
○会場:明治座(東京都中央区日本橋浜町2-31-1)
○チケット発売中:03-3666-6666(明治座チケットセンター 10:00~17:00)